「食堂かたつむり」(小川 糸 著)を読んだ感想、書評
失恋と共に、失語症になってしまった主人公の倫子が、母親のいるふるさとに戻り、「食堂かたつむり」を開きます。一日、一組の予約だけを受ける「食堂かたつむり」。しかも、お客と事前に面接をして、出す料理を決めるほどの懲りをみせます。手間をかけて、素材を吟味して、調理した料理は、どれもとても美味しそうで、食べてみたい気持ちになりました。この食堂で食事をすると幸せになれるというエピソードが続き、それが噂になり、お客がどんどん増えていきます。あたたかく、優しい気持ちに浸ることが出来る場面でした。
料理で、図らずも、みんなを幸せにしてきた倫子ですが、自分の母親との関係は、ずっと上手く行っていませんでした。みんなを幸せにする分、その部分が残念な気持ちになりました。そんな母親とのエピソードが最後にあるのですが、とても泣けるエピソードでした。
この作品は柴崎コウさん主演で、映画化されているのですが、批評を見ると、どれも「酷い」との感想ばかりでした。確かに、失語症という設定自体が「必要?」と思うところもあり、それを映画化すると、さらに分かりにくいのではと思ってしまいます。