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「ラストワンマイル」(楡 周平 著)を読んだ感想、書評

2006年頃に話題になっていた事件、話題をモチーフして構成された経済小説です。ネタになっているのは、ローソンをめぐる郵政とヤマト運輸の宅配サービス戦争、ライブドアによるニッポン放送株買収、楽天のTBS株大量取得事件などです。

 

あらすじ

「暁星運輸」(ヤマト運輸がモデルと思われる)が、ネット通販の「蚤の市」(楽天市場がモデル)に取引条件の変更を持ちかけられるところから話が始まります。「暁星運輸」としては到底飲めない条件を出されます。同時期に大手コンビニチェーン「ピットイン」(ローソンがモデル)より受注している宅配サービスを郵政の「ゆうパック」と併売させたいとの打診を受けます。「ゆうパック」との価格競争に勝てるはずはなく、「暁星運輸」は会社存亡の危機に立たされます。

 

「蚤の市」と「ピットイン」に代わる新規取引先を探していた広域営業部の横沢はある時に気がつきます。商品をお客様に直接届ける最終行程「ラストワンマイル」を握っている「暁星運輸」にしか出来ないサービスがあることに。それは、出店料無料のショッピングサイトを立ち上げることでした。出店料を無料にしても、配送をすべて「暁星運輸」で引き受けるのであれば、十分に成り立つビジネスプランでした。

 

「蚤の市」に株の大量取得をされていた「極東テレビジョン」(TBSがモデル)と利害関係が一致して、出店料無料のショッピングサイトを一緒に立ち上げていきます。最後に勝つのはどちらか…?

 

2006年当時の世相、技術をもとにした予想的な記述も、いくつか当てっているものがありました。「出店料無料のショッピングサイト」はYahooが実際にサービスをはじめました。ネットでの閲覧、商品の購入行動が、スマホタブレットなどのデバイスに移行していくであろうという予測も、その通りになりました。

 

Amazonの内容紹介より

本当に客を掴んでいるのは誰か──。暁星運輸の広域営業部課長・横沢哲夫は、草創期から応援してきたネット通販の「蚤の市」に、裏切りとも言える取引条件 の変更を求められていた。急速に業績を伸ばし、テレビ局買収にまで乗り出す新興企業が相手では、要求は呑むしかないのか。だが、横沢たちは新しい通販のビ ジネスモデルを苦心して考案。これを武器に蚤の市と闘うことを決意する。

 

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ラストワンマイル (新潮文庫)

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