「生存者ゼロ」(安生 正 著)を読んだ感想、書評
2013年第11回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。帯に「『ジェノサイド』や本作のようにスケールの大きいジェットコースター小説の台頭は嬉しい」とのコメントがありそれに惹かれて読みました。
Amazonの「BOOK」データベースより
北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の 富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられた。北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。未曾有の危機に立ち向かう! 壮大なスケールで「未知の恐怖」との闘いを描くパニック・スリラー。
導入から前半までは、「ジェノサイド」のような興奮を期待できるような展開でした。しかし、物語の後半になるにつれて、話がまとまりきらない感じになり、最後はB級映画のような展開になったのが残念でした。この「生存者ゼロ」と「ジェノサイド」を比べると、本当に「ジェノサイド」は面白いんだと、改めて感じました。
「生存者ゼロ」で気になる点はいくつかありますが、特に気になったのは、次の2点です。
石油掘削基地と北海道の一部で、全員がほぼ即死状態の原因不明の惨劇が起こり、当初は感染症が疑われますが、後半でその原因が判明します。しかし、それが原因であれば、これまでの現場でその痕跡が全く無いとは考えられず、小説の中とはいえ、リアリティがなさすぎます。
二つ目は、政権担当者の無能の描写の行き過ぎです。読んだ人は、東日本大震災、原発事故の際の民主党政権の対応を思い出すでしょう。おそらくあの対応に怒りを憶えて、こういった表現になったのかも知れませんが、あまりにも政権担当者が無能過ぎて、白けてしまいました。