「モンスター」(百田尚樹著)を読んだ感想、書評
百田尚樹さんの文章は、とても読みやすかったです。文章に深みがないとの感想も目にしましたが、読み手が、その場面で、知りたいことを適切に、しかも簡潔に表現されているので、500ページ近い作品でしたが、一気に読み終えました。
整形手術を繰り返して、どんどん綺麗になっていく「田淵和子」。綺麗になることにより、女性としてのステージがどんどん上がっていきます。ステージが上がることによる周りの人間の対応が変化していきます。いままで、自分にひどいことをしてきた人たちへの仕返しも出来るようになりました。
そういったところが、ヒーローコミックで、弱かった主人公が、修行によって強くなっていくことに通じるカタルシスを与えてくれます。最初の弱い主人公では、とても敵わなかった強敵を、どんどん倒していく所に感じる爽快感に似たものです。
整形手術の箇所の描写が、とても詳しかったので、あり得ない話であっても真実味を感じることができました。テレビ番組の「ビューティコロシアム」で、整形によって綺麗になっていく女性をみていましたが、手術後の顔は、どこか不自然さを感じるものが多かったような気がします。「鈴原未帆」の場合は、そう言った不自然さは感じさせない整形だったのだろうと想像しました。どのような顔か見てみたいと思いました。
この作品は、高岡早紀さん主演で映画化されました。ビデオの2次使用権で揉めているようで、予告編の動画しか観ていないのですが、私のイメージした「鈴原未帆」は、高岡早紀さんでは、ありませんでした。和子時代の特殊メークも、色々なものを顔に付けすぎて、顔が大きくなりすぎな感じを受けました。ビデオを観ることができるようになったら、本編で確認してみたいです。
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あらすじ
主人公は、ブスという言葉では軽すぎるほど畸形的な醜さで生まれ、実の母親にすら「ブス」と罵られながら育った「田淵和子」。実の親に愛されずに育ち、恋心を抱いた「高木英介」への歪んだ思いが、ある事件を引き起こしてしまう。その常軌を逸した犯行に、町の人々は「田淵和子」をモンスターと呼び忌み嫌う。親からは勘当される形で、東京の短大に入る際、母方の祖母の養女になったため、「田淵和子」から「鈴原未帆」へと名前を変える。
東京でもそれまでと同様、短大や職場で遭う差別される生活が続き、それ故、整形にはまり、風俗で稼ぎながら次々と整形を繰り返し、自分の理想の顔をつくりあげていく。顔を変え、名前を変え、年齢を変え、別人の人生を手にした「田淵和子」の胸には「高木英介」への変えられぬ思いがあった。自分の町へ戻り、レストラン「オンディーヌ」を経営する町一番の美女・「鈴原未帆」となった「田淵和子」は、かつて自分にひどい仕打ちをした者たちへの仕返しをしながら、「高木英介」の来店を待つ・・・。